Pre Mission
- フィン
- …イオリ。
もしかして昨日の夜、俺の後を
尾行していたのか?
- イオリ
- でも貧しくて飢えてる人たちに
食糧を届ける行為は、止められなかった。
私の信念が、それを許さなかったんだ…
- フィン
- イオリ…
- イオリ
- …革命軍のリーダーとの話も聞いていた。
武器庫の話も…全部。
- イオリ
- お願いだよ、フィン。
武器庫を襲う件については、
実行に移さないでほしい。
- イオリ
- 防衛軍は確かに厳しすぎる。
ラストヘイヴンの実権を握った彼女らは、
民にも兵にも理不尽な治世を強いている。
- イオリ
- だけど、防衛軍はアンデッドの手から
民を守る唯一の戦力でもあるんだ。
- イオリ
- 武器庫が破壊されたら
対革命軍の戦いだけじゃなく、
対アンデッドの戦いにも影響が出てしまう。
- イオリ
- 一度アンデッドに潜り込まれたら
もうその都市はほぼ終わりだ。
皆…死ぬしかなくなってしまうから…
- NOTEXT
- フィン
- …俺は。
- イオリ
- うん。
様子が変だったからね。
- フィン
- 俺は、まだ何が正しいのか分からない。
だから…ごめん、即答できないよ。
- イオリ
- …そっか。
- イオリ
- 分かった…
考えてくれただけで、嬉しいよ。
- フィン
- … … …。
- フィン
- あ…そうだ、
教えてほしいことがあるんだ。
- フィン
- リュドミラの言っていた、
“島”っていうのは何なんだ?
- イオリ
- あ…そっか。
別世界から来たんだから、
フィンが知らないのは当然だよね。
- イオリ
- あっちを見て。
目を凝らせば、ここからでも薄っすらと
見ることができるはず。
- フィン
- あれは湖かい?
“島”っていうのは、
あそこに浮かんでいる、あの島のこと?
- イオリ
- そう。
正しくは“沈魂島”って呼ばれてる。
- フィン
- …全然気配がしなかった。
監視も、全員撒けたものだと思ってたよ。
- イオリ
- あの島は難病の末期患者や
寝たきりの高齢者、重体の兵士…そうした
死にゆく者たちが送られる場所なんだ。
- フィン
- どうしてわざわざそんな…
近しい人たちで看取ってあげないのか?
- イオリ
- …アンデッドを司る王、オルニクス。
オルニクスが世界に降らせる黒い雨は、
触れた死体をアンデッドに変える。
- イオリ
- 死体を燃やして肉体を消しても、
死に場所に囚われた魂に黒い雨が触れれば…
- イオリ
- “塔”と呼ばれる場所で、
アンデッドとして身体を得て
オルニクスの尖兵として蘇ってしまうんだ。
- フィン
- 亡骸を埋めても駄目なのか?
- イオリ
- 駄目だ。
雨は地中深く染み入って、
やがて魂や肉体に触れてしまう。
- イオリ
- 死んだ者がオルニクスの支配から逃れる
唯一の方法は、雨の届かない
水中深くに沈める…“水葬”だけなんだ。
- フィン
- だから、死にかけた人は
予め水の近くに送られて…
沈められる…?
- イオリ
- そう…実際に命を失ってから水葬を
しようとしても、雨の降るタイミング次第で
間に合わないかもしれないから。
- イオリ
- 私の家系は代々、主となる者の
身辺警護を担ってきたんだ。
- NOTEXT
- フィン
- 仕方ないんだろうけど…
…残酷な話だな。
- イオリ
- うん、仕方ないんだ。
それと死体がアンデッドになるルートは
もうひとつあって…
- イオリ
- 死体に、他のアンデッドが触れること。
アンデッドが宿すオルニクスの炎を、
直接注ぎ込まれることなんだ。
- フィン
- (あ…そういえば、“リゼット”も
黒い炎を纏っていた…
あれが、オルニクスの炎なのか?)
- イオリ
- もしアンデッドが街の中で一人生まれたら、
その場で仲間を増やして…また殺す。
そうして無限に敵兵が増え続けるんだ。
- NOTEXT
- フィン
- ハイメリアは、そうだった。
敵兵が増えすぎて、手に負えなくなって…
- イオリ
- この間言ってた、アンデッドに
転覆されかけてる国のこと?
ハイメリアっていうんだね。
- イオリ
- …こっちの世界だって、
そうして滅んだ国や村は数えきれないよ。
私の故郷も、そうだった。
- イオリ
- だから、怪しい気配には敏感で…
悟られないようにするのも、
人一倍得意だから。
- イオリ
- だから、沈魂島の存在は
仕方のない…必要なことなのかもしれないと
私は思っているよ。
- フィン
- そうか…そうかもしれないな。
- フィン
- (こっちの世界のルールは
めちゃくちゃで、残酷な話ばっかりだ
と思っていたけど…)
- フィン
- (一応、今の体制になった経緯も、
仕方ない理由もあるんだな)
- フィン
- (…アストリッド。
彼女は、革命軍として今のラストヘイヴンを
壊そうとしている)
- フィン
- (彼女は、こうしたやるせない問題について
解決策をどんな風に
思い描いているんだろうか…?)
- フィン
- …そうだったのか。
- イオリ
- まあ、家系って言っても、
私の家はもうアンデッドによって
壊滅しているんだけど…
- フィン
- … … …。
- イオリ
- …昨日、本当は不意を打って
フィンを止めることだって出来たんだ。